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2006年12月

今年の10大ニュース(海外)

今年の10大ニュース(海外)

 10大ニュースも海外の内容も大きな動きが出た。
 今年は去年と引き続き「悪の枢軸国」といわれるイラン・イラク・北朝鮮の三カ国の話題と原油の高騰の話題である。

1  北朝鮮が核実験を実施 
 北朝鮮は10月9日、同国北東部の咸鏡北道吉州(キルジュ)郡豊渓里(プンゲリ)にある実験場で地下核実験を強行した。
2  ジャワ島地震で死者約6000人 
 インドネシアのジャワ島中部で5月27日早朝、マグニチュード(M)6・3の地震が発生した。人口密集地である古都ジョクジャカルタ一帯で約5800人が死亡、40万人以上が家を失った。耐震性の低い簡素な構造の家屋が多いことが被害拡大につながった。3  北朝鮮がミサイル発射 
 北朝鮮は7月5日、日本海方面に向けて長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を含むミサイル7発を発射した。
4  冥王星、太陽系惑星から除外 
 プラハで開かれた国際天文学連合(IAU)総会は8月24日、惑星の定義を新たに採択して冥王(めいおう)星を惑星から格下げし、太陽系の惑星を9個から8個とした。
5  米中間選挙で民主党勝利 
 ブッシュ政権のイラク政策を最大の争点とする米中間選挙が11月7日行われ、民主党が12年ぶりに上下両院で多数を占めた。
6  フセインに死刑判決 
 イラク高等法廷は11月5日、イラク戦争で政権を追われた元大統領サダム・フセインに対し、死刑判決を言い渡した。
7  ニューヨーク原油が77ドル突破 
 ニューヨーク商業取引所の原油先物相場は7月14日、指標となる原油取引価格について1バレル=77・03ドルで取引を終えた。
8  鳥インフルエンザ死者、通算で100人突破 
 世界保健機関(WHO)は3月21日、アゼルバイジャンで鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)により、5人が死亡したと発表した。>>詳細
9  元露FSB中佐、英国で殺害 
 ロシアのプーチン大統領を批判していた露連邦保安局(FSB)元中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏が11月23日、亡命先のロンドンで死亡した。
10  インドで列車同時テロ 
 インド西部ムンバイで7月11日、列車や駅などで7回の爆発が起き、少なくとも179人が死亡した。

 日本における海外の話題は、アメリカからの報道が多いのと、アメリカからの情報に左右されるマスコミによってフィルターがかけられている。当然にアメリカ政府が「悪の枢軸国」といった三カ国の話題が、「もっとも日本にとって関心の高い話題」であるかのように報道されている。世界はもっと広いのに、争いもアフリカなどでも起きているのにである。
 ではアメリカの価値観とは何か
 要するにエネルギーと核の二つのキーワードで制御されているといえば間違いがないであろう。悪の枢軸国の2カ国は重要な産油国であり、そして北朝鮮はマンガンなどのレアメタルと核兵器の元となるウランの産地である。
 この参加国を自分の意のままに動かすということは、当然に時刻のエネルギーを潤滑にすることが可能である。エネルギーの潤滑さというのは、ただ電気が余計に使えるとか、トラック輸送の輸送費が安くなるというのではなく、単純に軍事研究と軍事演習が自由に行えるということを意味している。
 軍事的な優位は、外交的な優位であるということに他ならない。
 単純に、太平洋戦争当時、初期に日本は「南部仏印進駐」という行為をしている。これはあくまでもアルミニウムの元となるボーキサイトと石油の確保である。ブロック経済といわれる経済携帯において後進国であった日本は、その経済に取り残され、あわてて台湾と朝鮮を自己のブロック経済の支配下に置いたが、中国はなかなか広く手が出せない、しかし、支配しやすい東南アジアはイギリス・オランダ・フランスの植民地化が進んでおり、どうにも手が出せなくなっていた。この状況を打破するために、一方では中国に対する領土拡大を図った。これが満州国の設立であり、王兆明政府の樹立である。一方、東南アジアに対しては、南部仏印進駐として、「欧米列強からの開放」を旗印に、軍隊を進駐させ、エネルギーの確保を行った。
 昨今、このような日本側の理論に基づく戦争解釈に対してアメリカがクレームをつけ、靖国神社におけるそれらの記述を削除する動きがあるが、実際にアメリカが行っている内容は、現在もあまり変わらないのではないか。
 そのアメリカへの反発としてイランの核発電や北朝鮮の核ミサイル開発の動きなどが発展してゆくことになる。この動きは、環境にやさしいエネルギーなどという問題ではなく、やはり化石燃料が世界経済の中心であり、同時に核ミサイルが交渉と軍事と外交における重要なひとつのまたーとなっていることを示している。この関連のニュースは来年も新聞紙上だけでなく日本の海外ニュースの大きな項目として大半を占めるであろうことが予想される。

 さて、そのエネルギー戦争には、当然にロシアも参戦している。このロシア国内では、プーチン政権がロシアの国営石油公社をすべて自己の支配下に置き、経済を独占するという動きがあった。
 その動きから、カザフスタンやキルギスでの反政府組織のテロが発生したり、内戦が起きたりすると同時に、ロシア国内においてもプーチン政権への反発が行われた。KGBの職員でスパイといわれたリトビネンコ氏の暗殺事件(9位)は、こうした動きのひとつの流れとしては興味深い。
 特にその殺害方法が「ポロニウム」という核物質を使用しているという点にかなりの大きな問題と、今後のテロのひとつの新しい形が考えられるのではないだろうか。要するに、ポロに有無による大量無差別殺人などというものが、今後「地下鉄サリン事件」のような事件として発生しないとも限らない。テロといえば、爆弾というような単純な方程式が通用しなくなる時代であると考えたほうが良い。
 
 さて、そのような中で、面白いニュースがひとつだけベストテン入りしている。
 冥王星は惑星ではない。という話である。これに関しては、ブログでも8月か9月に書いているが、なかなか、今まで「水金地火木土天冥海」と覚えてきた内容が、「学者」といわれる人の協議で勝手に変えられてしまったのである。
 私はどうも「学者嫌い」らしい。もちろん「学者」としてすべての研究者をひとくくりにしても良くないのであるが、どうも、学者といわれる人と長く話しているとあまり良い結果にならない。
 その学者が一同に会して、惑星の定義を決め、そして冥王星が惑星かどうかを決めるというのであるから、大真面目で何をしているのかまったくわからない。学者にとっては非常に重要なことなのであろう。しかし、一般の我々からすれば「惑星の定義」をいまさら決めるというのは何であろうか。という気分になる。
 今後もそのようなことになりかねない。常識は簡単に覆されるのである。

 ちなみに11位以下はこうである。
11  イラクで本格政府発足 
12  タイで15年ぶりのクーデター 
13 英当局、航空機爆破テロを未然に阻止 
14  韓国・ソウル大の黄教授、論文ねつ造で摘発 
15  イラン、ウラン濃縮を公式に認める 
16  イスラエルがレバノン侵攻 
17  仏で若者雇用政策に抗議デモ 
18  次期国連事務総長に韓国の潘基文氏 
19  ロシアで初めてのサミット開催 
20  イラクで宗派抗争激化 
21  胡錦濤・中国国家主席が初の公式訪米 
22  比レイテ島で大規模地滑り 
23  ノーベル平和賞にバングラデシュのユヌス氏 
24  ローマ法王がイスラム教“侮辱”発言 
25  ムハンマド風刺画問題で中東諸国などで暴動 
26  ポーランドで見本市会場の屋根崩落、66人死亡 
27  イスラエル軍、ガザに本格侵攻 
28  パレスチナ評議会議員選でハマスが圧勝 
29  中国の外貨準備高が1兆ドル突破 
30  鉄鋼メーカー世界1、2位が合併発表 

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2006年10大ニュース(国内)

2006年10大ニュース(国内)

 毎年恒例になった10大ニュースが発表になった。
 まず、その内容を挙げてみよう。

1  紀子さまが男子ご出産 
 9月6日、秋篠宮妃紀子さまが、入院先の東京都内の民間病院で帝王切開手術を受け、男のお子さまを出産された。
2  トリノ五輪、フィギュア荒川静香選手が「金」 
 第20回冬季五輪・トリノ大会のフィギュアスケート女子で2月23日、荒川静香選手が、金メダルに輝いた。
3 WBC、王ジャパンが初代王者 
 初の野球の国・地域別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」は3月20日、米サンディエゴで決勝が行われ、日本が10―6でキューバを破り、初代世界王者に輝いた。
4  安倍内閣が発足 
 安倍晋三氏が9月26日、第90代、57人目の首相に選出され、安倍内閣が発足した。
5  夏の甲子園決勝、37年ぶり引き分け再試合で早実が初優勝 
 8月20日、第88回全国高校野球選手権大会の決勝戦が駒大苫小牧(南北海道)と早実(西東京)の間で行われ、延長15回の激戦の末、1―1の引き分けとなった。
6  ライブドア事件で堀江貴文社長ら逮捕 
 東京地検特捜部は1月23日、関連会社の企業買収に伴い虚偽の発表をしたなどとして、ライブドアの堀江貴文社長ら4人を証券取引法違反容疑で逮捕した。
7  福岡で中2が遺書残し自殺、「いじめ苦」自殺相次ぐ 
 10月11日、福岡県筑前町の中学2年の男子が「いじめられて、もういきていけない」などと書かれた遺書を残し、自宅で自殺した。
8  日本ハム、44年ぶり日本一 
 プロ野球日本シリーズ第5戦が10月26日、札幌ドームで行われ、北海道日本ハムファイターズが4―1で中日ドラゴンズを下し、東映時代の1962年以来44年ぶりの日本一に輝いた。
9  秋田の小1男児が殺害され発見、子供が犠牲の犯罪相次ぐ 
 下校途中に行方不明になっていた秋田県藤里町の小学1年の男児(7)が5月18日、遺体で発見され、県警は6月、男児宅の近くに住む無職の女を死体遺棄容疑で逮捕(後日殺人容疑で再逮捕)した。
10  福岡市職員の飲酒事故で3児死亡、自治体で飲酒運転への懲戒免職広がる 
 福岡市で8月25日夜、一家5人が乗った車が、飲酒運転の同市職員の乗用車に追突され博多湾に転落、子供3人が水死した。

 今年は、10位までに比較的明るいニュースが上げられている。紀子様のご出産やWBCでの優勝、トリノオリンピックの荒川静香選手の得意技「イナバウアー」は流行語大賞にもなった。
 しかし、それだけではなく、子どもの犠牲という悲惨な事故が上げられていることにも注目したい。いつもの年ならば政治や経済の大きな問題が出てくるのであるが、今年は子どもの犠牲になった事件が出てきている。
 「秋田小学生連続殺害事件」は、虐待に関する家庭崩壊と、隣人関係における殺害事件である。これは一人の特異な無職女性の犯罪というのではない。その証拠に、この事件を契機に、家庭内の虐待殺人や事故が相次いでニュースとなった。今年は、家庭の崩壊、家族関係の崩壊というのが話題になった年である。後で記載するが、24位には奈良県の高一男子の放火、家族焼死事件などは、父親に対する反発からこのような事件に発展した。家族に対する愛情の欠如と、子どもへの過剰な期待、そして、その圧力に対する子どもの受け取りの欠如、そこに継母の関係など、複雑な家庭環境から高校一年生が自宅に放火するという事件に発展する。
 事件ではないが、「いじめ自殺」も大きな話題になった。いじめ自殺自体は、何十年も前から話題になっている。しかし、今年はそれが教育再生ということとあいまって大きな話題になった。文部大臣に対して「いじめ自殺」の予告手紙を出すということまで発展した。これは学校、教育関係の崩壊の結果と見て間違いがないであろう。やはり下位である15位に高校の必修逃れ問題が発覚したことが話題になった。高校が大学受験とその合格率を重視するあまり、受験と関係のない授業を割愛し、その単位の取得を甘くしていたという問題。そもそも、学校の役割を「大学受験と合格率」ということに絞ってしまった教育の現場が、人間形成と道徳の軽視ということにつながっているのではないだろうか。
 子どもを取り巻く環境である「家庭」と「学校」の崩壊が、話題になった一年といえる。この問題がそのまま「モラルハザード」を生み出してしまっている遠因のひとつになっているのではないだろうか。そもそも、このようなことは現在に始まったことではなく、これらが一般化し、そして顕在化したがために、事件として出てきたといえるのではないだろうか。ということは、現在社会人になっている世代や大学生の世代は、当然に、これら「学校崩壊」「家庭崩壊」の犠牲者が成人しているということになる。
 これが「ゆとり教育」だけの問題ではなく、社会全体の「ひずみ」があり、それを建前論で見て見ぬふりをし、現実にあわせた対策を採らなかった政府および現場(中川政調会長が発言した日教組も大きな責任があると個人的には思うが)はその責任を取らなければならないであろう。 
 どちらかといえば、現場がそれらの声を上げなかったことに大きな問題あがあると考える。これらの流れが「少子化対策」という「家庭環境改善」と「教育基本法改正」「教育再生会議」という「学校教育の改善」に目が向けられるのは当然のことであろう。
 これらの「教育基本法改正」に反対している諸兄は、現在のこの「いじめ自殺」や「家庭環境崩壊」をどのように考え、そして解決するつもりであろうか。まさかとは思うが、今までの自分のしてきたことや現状の子どもを取り巻く環境が「正しい」と考えているのか、あるいは、何も感じないのか。はたまた、それらに目をつぶり、自分の責任逃れと、今後の自分の職の確保という観点から動いているのではないだろうか。教師・教員はこれらについて「家庭」や「政府」にすべての責任を押し付けているのではないだろうか。その態度こそ、もっとも大きな問題ではないか、改善されるべき点ではないのだろうか。
 
 教育については、別に、政治の問題が少ないのも特長であろう。安倍内閣の発足(4位)しか10位の中に入っていない。政治に関心のない1年であったという。
 政治問題だけでなく、社会問題もない。ライブドア事件以外は10位以内に入っていない状況である。「耐震偽装事件」「県知事贈収賄事件」「駐車違反取り締まり強化」「民主党偽メール事件」「社会保険庁不正」「パロマ湯沸かし器ガスもれ事件」「村上ファンド事件」などもあったが、いずれも10位以下にランキングされている。これらをおさえて明るいニュースが選ばれたということは、それだけ、国民が明るいニュースを望んでいるということの表れではないだろうか。
 マスコミは、これら国民の要望に答え「明るいニュース」をもっと報じなければならない。
 今最も必要なのは「改革」ではなく「希望」なのではないだろうか。来年の指標にしたい。

 ちなみに11位以下はこうっている。
11  耐震偽装事件で姉歯秀次・元1級建築士ら逮捕 
12  北朝鮮核実験で制裁強化 
13  日本海側で記録的な大雪、死者100人超 
14  西武の松坂大輔投手が米レッドソックスに移籍決定 
15  高校の必修逃れ問題が発覚 
16  福島県前知事を収賄容疑で逮捕、自治体の不祥事続発 
17  北海道で竜巻、9人死亡 
18  駐車違反の取り締まり強化、民間監視員も導入 
19  サッカーW杯に日本が3大会連続出場、グループリーグ敗退 
20  埼玉の小2女児、プールの吸水口で事故死 
21  民主党の「偽メール」問題 
22  オウム松本被告の死刑確定 
23  パロマ湯沸かし器の事故死21人、企業倫理低下の事故多発 
24  高1放火で母子3人死亡、親を殺害する事件相次ぐ 
25  社保庁で国民年金保険料の不正免除問題発覚 
26  イラク派遣の陸自撤収 
27  各地で豪雨被害 
28  村上ファンドの村上世彰代表を逮捕 
29  小泉首相の在任日数、戦後歴代3位 
30  郵政「造反組」11人が自民復党 

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ロシアスパイ暗殺

ロシアスパイ暗殺

 最近、話題に不足している。
 政治の世界でも、なかなか新しいものが出てこないのが現状である。国際社会も様々あるようで、なかなか目新しい話題に不足している。
 そんな中、久しぶりに新しい話題が出てきた。ロシアの元情報局員であるリトビネンコ氏(43)がイギリスで暗殺されたという。それも毒物、ことに放射性物資を飲まされてのことというのである。
 さて、ロシア、その後のソ連を含めて、この国は暗殺と粛清の歴史をもっている。そもそもロシア革命の元勲の一人トロツキー氏のレーニンやスターリンによる暗殺粛清は「斧で頭を割られた」など、話におひれがついて有名である。正直な話、今回のリトビネンコ氏に関する暗殺説が出たとしても、またその繰り返しかもしれないと思うところもあるし、ゴルバチョフ書記長の行った改革「ペレストロイカ」以降も、こんなことをやっているのかという驚きと二つある。
 そもそも、日本のような個人主義、主権在民の国とは違う。経済は資本主義化しているものの、やはり政治に関しては全体主義、社会主義であり、その中で経済部門だけが自由化されたに過ぎない。結局思想や政治、イデオロギー、軍事に関して体制批判をすれば、社会主義、全体主義の観点から粛清の対象になることは十分に考えられることである。
 多くの日本人は、経済に関して自由であれば、思想も体制批判も、イデオロギーも宗教も何でもすべて自由になっていると勘違いしている。そこで今回のような事件が起きると、日本人の常識から判断して「おかしい」と思ってしまうものである。しかし、必ずしもそうではない。日本の場合は、それらの自由が日本国の憲法で守られているから自由なだけであって、それらが自由でない国は少なくない。殊に、軍事機密などに関しては、自由に知ることができないのが通常であり、マスコミ各社が話題にしている「知る権利」などということを言えば、頭がおかしいと思われる。
 話題がそれるが、そもそも軍事報道というのは、軍が自国の威力を誇示するということを目的にしているだけと思われがちである。特に太平洋戦争時の日本の報道は「大本営発表」として、大日本帝国軍が鬼畜米英や中国の軍を打ち破った話ばかりであり、それが敗戦濃厚となった終戦間近まで続いた。このことによって「大本営発表」と今使えば、「自分たちに都合のいい嘘の報道」という意味で使われる。しかし、軍事報道というのは、程度の差はあるにせよ、自国に都合のいいものの必要がある。それは「自国民を騙す」というためでなく「軍資金調達」という目的のためである。
 当然に、戦争をするには軍費を稼がなければならない。たとえばイラクに現在駐留しているアメリカ軍の戦費は一日200億とも500億とも伝えられる。その数字は定かではないが、いずれにせよ多大な費用が必要となる。ミサイル一発1億円など、武器、軍事物資は高額である。そのうえ、軍事物資ということは、破壊をしても生産することはない。要するに投資としてのリターンがない。ビルの建築などで「スクラップアンドビルド」ということはあるが、破壊のみで生産がないのが軍事産業である。
 これら戦費を稼ぐには、一つには自国の生産性を挙げることであるが、もう一つ、最もポピュラーなのが軍事国債の発行である。この国債も、通常の国債と同じ、リスクに応じて金利が上下することになるが、当該リスクの最も大きいことが敗戦である。かてば、軍事賠償金なり、植民地なり、何らかのものを得ることができるが、負ければ、最悪の場合国ごとなくなってしまうことも少なくない。そうなれば、当然に国債はデフォルトされることになる。よって、価値負けの確立で国債の価格は上下し、また軍事国債の引き受けも変わってくる。
 いわゆる「軍事報道」は、当然にこの海外や国内の軍事国債購入者に対する安心感と、新規発行の場合の引き受けての獲得のためが主である。最も。分時報道でなくても、企業IRなどは、この「軍事報道」に近い。会社の限りない発展と、今後の収益の増加の確実性を表現する場であり、投資家はその情報と、一般の報道におけるネガティブ情報とで、判断して投資を決める。
 軍事報道で苦労したのが日露戦争。当時の参謀本部次長児玉源太郎大将は、大本営より軍事報道の重要性と軍事国債(このときは大蔵大臣高橋是清がイギリスやアメリカを回っていた)の受託がなければ、打つ大砲の玉もなくなるふぉいう事態にあった。かの有名な二〇三高地攻略における乃木希典第三軍司令官は、その弾薬と高地のうえにある陣地を攻略するために、海軍の選管から大砲を下して、その大砲を海軍の許可と砲術師を迎えて攻略に使った。準備をしない、現地調達制度と、情報戦略の軽視は日本陸軍だけでなく日本の政府の伝統的欠陥である。このことによって太平洋戦争の補給の不完全と各個撃破の浮き目を見ることになるし、昨今では、イラクで日本人が拉致されてもアメリカやイギリスの情報機関に頼らなければ何もできないという状況が生まれる。日露戦争時は、児玉源太郎大将が報道を管理し、戦費調達を楽にした。このことによって軍事報道の重要性はよくわかる。
 話を元に戻す。
 「軍費調達」のための軍事報道といえども、戦略や武器の性能などは発表しない。当然にそれらの報道を聞いて相手が準備してしまう。企業における出店戦略や特許なども同じである。
 これら機密事項を発表されると困る場合、情報を制限するのは至極自然のことと考えられている。逆に、マスコミ側であっても、それらを発表しないという自主規制が働く。
 話を戻して、リトビネンコ氏の場合もその法則は働いていたといってよい。よって、彼の秘密の暴露は、ロシア国内ではまったく使われなかった。リトビネンコ氏はそれでも反体制の意思を貫くためにイギリスなどに出向き、そこで情報部としての秘密の暴露と反体制、プーチン政権反対のスローガンを挙げ、そして同市を募った。その同志として会見した中の一人、または複数に、二重スパイ、ようするにリトビネンコ氏殺害の命令を持った人がいたと考えるのが自然である。
 私は、ここまでリトビネンコ氏の殺害を依頼、または命令したのが誰かということについては言及していない。ただ、この状態で暗殺されたということは、彼に話して欲しくない秘密を握られている人か、あるいは、秘密を話すという行為によって何らかの不利益をこうむる人であり、まったく関係のない人が、元スパイを殺す、ましてや放射性物質を使って殺すということはない。そこで、プーチン政権の幹部またはそれに近しい人、または軍事、国営企業などでリトビネンコ氏がスパイをしたということを話されて困る人、または、リトビネンコ氏が所属していた組織の上司などそのかかわりの人ということができる。
 次に、殺害方法である。リトビネンコ氏は、極めて毒性の強い放射性物質を飲まされた可能性が強いとされている。検死結果により、遺体から強度の放射性物質が検出された。体内から発見されたということから、まずは放射性物質が何らかの食べ物または飲み物の中に入れられており、それを知らずに体内に入れたと考えるのが普通であろう。
 ということは、リトビネンコ氏が会った人(もちろんレストランなどの従業員も含まれる)でなおかつ彼が飲食を行った場所に関係する人物と特定される。当然に、彼自身スパイであったのだから、自分に対する粛清ということに警戒していただろう。そのうえ、放射性物質の強さからみて、最近接触した人物であると想定される。当然に犯人は限定されるということになる。
 上記の依頼者と考えあわせれば、ロシア国内から放射性物質をロンドンに持ち込んだか、あるいはロシア人でも簡単にロンドン市内で毒性の強い放射性物質を手に入れることができるということになる。
 ロンドンはMI5という国内情報機関、ロンドン市警察局、通称「スコットランドヤード」そして、国際情報機関MI6と三種類の情報機関が存在しその治安を守っている。しかし、今年夏の地下鉄バス同時爆破テロ、そして今回の放射性物質となると、これら情報機関の力が落ちたのか、あるいは政府間で何らかの合意や取引がなされたのではないかと疑うこともしなければならないだろう。
 逆な言い方をすれば、これら優秀な情報機関を持ちながら、いとも簡単に放射性物質を持ち込むことができるということは、簡単に核爆弾や毒物を持ち込むことが可能であるということになる。情報機関の弱い日本ではなおさらであろう。とはいえ、今回の事件から、空港での手続きやチェックを強化することは完全に無意味であろう。ただ単に一般の旅行客に不便をかけるに過ぎない。金属探知機やX線による検査をしても、鉄箱の中まで見渡せるものではない。
 ロシア国内の勢力争いや、情報機関による暗殺という行為は、ロシア国内のことであるから興味はあっても特に直接的な影響はない。しかし、放射線物質の持込が容易であるということを示した今回の事件は、別な意味で、テロの活発化を招く可能性がある。
今回は反体制スパイの暗殺であるが、この毒物を不特定多数に頒布したり、または飲料水に混ぜる、または、もう少し高いプルトニウムを持ち込んで爆破などということが可能であるならば、小型核爆弾が実質上「持ち運び」可能ということを示し、テロだけでなく多くの犯罪の温床となる可能性がある。
 テロ、スパイの楽園という不名誉な称号を持つ日本にとって、今回の事件を気に抜本的なテロ対策と、一般人に不便をかけない検査方法の確立を急ぐべきである。

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