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2007年8月

民主・小沢氏が米大使にテロ特措法反対言明

民主・小沢氏が米大使にテロ特措法反対言明

 参議院選挙が終わり、国会の紛糾と政治の不安定が確定的になった、いわゆる「ねじれ国会」になることがあきらかになった。これにより国会の混乱並びに政治の停滞は明らかになり、政治以外にも様々な影響が予想される事態になった。
 この状態に真っ先に反応したのが、アメリカ政府である。日本における国会の空転は、現在のブッシュ政権の重要な支持者を失うのに等しい。これは、イギリスにおけるメージャー首相の退陣、ブラウン新内閣の発足よりもある意味で大きな影響と考えたであろう。
 まず、アフガニスタン、そしてイラクに対して派遣している自衛隊がなければ、アメリカは中東石油地帯で展開している軍隊の支持者を失うことになる。
 今のブッシュ政権にとって、日本の支持は欠かせない。小泉内閣のときに「ポチ」などと揶揄されていたが、日米関係は相互に補完関係を保っているのであり、日本が一方的にアメリカに追従しているのではない。
 アメリカのシーファー大使は、8月8日に民主党小沢代表と面会し、テロ特措法延長に理解を求めた。
 これ以前に、小沢党首に面会を申し込んだが、小沢党首はこれを拒絶。二回目の申し入れで実現したものである。
 国の代表が会談するのでは異例なことであるが、小沢代表はこの会談をすべてマスコミに公開、そのうえで、アメリカの中東での軍の展開は「アメリカの独断での戦争」であるとしたうえで、アメリカの独断の戦争において日本が力を貸すことはないとし、テロ特措法延長に改めて反対の意思を表明した。
 さて、ここで問題がある。
 一つは、アメリカの中東石油地帯での軍事行動の恩恵を日本は受けているのかいないのか。
 次に、小沢代表は、テロ特措法に反対を表明しているが、それは民主党を代表、しいては参議院与党を代表しての発言なのか。
 そして、今後の日米関係をどのようにするつもりなのか。
 まず、アメリカ中東石油地帯での軍事行動は、日本に確実に影響を与えている。日本の報道は、日々、テロや死者の数を報道することに終始し、感傷的に石油地帯でのアメリカの行動が悪いというような報道をしている。しかし、日本はその原動力たる石油の88%を中東地区から輸入しており、イラン、イラク、アフガニスタンといった、アメリカ軍が展開している石油地帯からも、日本は石油を輸入しているのである。
 新潟中部地震で、多くの被災者が出たことは痛ましいが、それ以上に、今回の猛暑の中新潟柏崎の刈羽原子力発電所が止まったことは大きな影響になった。このことによって、毎年夏、東京などの都市部の電力需要は大きくなるのであるが、その電力が800キロワット足りなくなったのである。これを火力発電によって切り替えるために、日本は月間100万キロリットルの重油が必要になるといわれている。もちろん、石炭や天然ガスなども併用するが、それだけのエネルギーが足りなくなっていることは事実だ。緊急時用の備蓄石油で対応しているものの、その備蓄燃料も90日分で枯渇する。この事態を打開するには90日以内の石油の緊急輸入を必要とする。そのときに最も頼りになるのが中東である。その中東の治安の安定は、日本にとって最も利益を生んでいる。
 アメリカの軍事行動のきっかけはともかく、日本という国家の現状を考えたとき、今回の小沢党首の対応には疑問に感じる。要するに、「石油(成果果実)はほしい、しかし、そのための労務(自衛隊支援)は断る」というものである。このポーズは、マスコミに会談を公開したところでもわかる通り、小沢代表の本位というよりも、日本国民に対するポーズ、もっと言えばプロパガンダに過ぎないと考える方がよい。しかし、アメリカがそのように解釈してくれるかは疑問である。
 私の親しいアメリカ人のジャーナリストは、今回の小沢党首の対応から「日本は政権が変わると、国家としての約束を変えるのか」といっていた。「同盟ということの意味をどのようにとっているのか。強いものにNOというのはいいかもしれないが、それによる恩恵をすべて捨てる決断と、それに対する国民の理解を得られるつもりか。」とのこと。上記に、私は日米関係は相互に保管関係があると記載した。このことに関しては今までにも触れてきたし、今後も触れることになるが、日米関係は、「戦争に負けた」と卑屈になっている人以外、対等な独立国間の関係であるといってよい。少々国力に差があるが、同盟とお互いがいえるほどの関係である。
 その同盟国に「NO」といえることそのものが確固いいのではなく、同盟国と協力して何を成し遂げるか、そして、それができない場合は、同盟国にも踏みとどまらせることが最も重要である。ただ、ガキの喧嘩のように手前勝手な屁理屈を振りかざして相手を困らせるのはよいことではないし、それを賛美する国民は、「同盟」ということをもう少し考えなければならないであろう。なお、ここでいう同盟は、軍事同盟のことばかりをさしているのではない。今回の小沢代表のやり方は、ヤンチャな子供が、強い相手に周りの目を確保してから言いたいことを言ってやったと喜んでいるかのようにしか見えない。国民の一部には受けるかもしれないが、アメリカの反感を買うことは間違いがない。「リメンバー・パールハーバー」である。
 さて、次の点に移ろう。
 この意見は民主党を反映しているのか。8月12日に放映されたテレビ番組で、前原前代表は「テロ特措法の延長は必要である」とし、「現在の自衛隊の能力からいえば、補給業務が妥当である」との見解を示した。
 この発言は二つの意味がある。一つは民主党内にもテロ特措法の延長が必要と考えている勢力、意見があること。もう一つは小沢代表は、足元の民主党を完全に把握していないということである。
 小沢代表が民主党を把握していないのであれば、小沢代表はシーファーアメリカ大使に対して、半ばまとまっていない個人的な意見を、マスコミを集めて言い放ったということになる。これは、政党政治のうえでは非常に大きな問題であろう。政党の意思が決定していないのである。
 もともと、民主党は「鵜合の衆」「寄せ集め政党」と揶揄されてきたが、今回も図らずしてそれを露呈した形になる。
 小沢代表にしてみれば、あまり読まれていない、民主党のマニュフェストを信任されたので、参議院選挙に勝利したと考えているであろう。しかし、私の見方は以前にも示した通りに、安倍政権の不信任であり、小沢民主の勝利ではない。そのことを見誤って党運営をすれば、民主党内で不協和音が発生し、同時に、その不協和音が今の安倍政権のように党運営そのものに響くことになる。
 今回の前原前代表の発言は、小沢独裁の民主党に対する波紋を投げかけるものであり、また、民主党の弱点をアメリカまで含めて全世界に露呈してしまったものであろう。
 この件に関し、小沢執行部は民主党内の反対分子をどのように処分するのか、あるいは、包含するのか、懐柔するのか、または放置するのかは、非常に見ものであろう。いずれにせよ、小沢代表の言葉は、大きく広げても民主党内の小沢支持者の意見でしかなく民主党または参議院与党としての意見ではない。
 このことは会見後のシーファー大使の「私は楽観ししている」という発言にも現れているとみることができよう。
 最後に、民主党の、または小沢代表の日米関係の展望である。私は「何も考えていない」とみる。何も考えていないことそのものが、今回の対応であろう。一つの事件で会見をし、包括的な日米関係に関して何も語っていない。大使との会話でそのようなことをして許されるはずがない。それが許されるのは、相手が政治家でないときだけである。たとえば北朝鮮のらち被害者の会の代表である横田夫妻が、アメリカ大統領と会談し、拉致問題の解決やせいぜい北朝鮮のこと以外話すことはない。しかし、政治家であれば、直接対話をする機会は少ないのであるから、当然に包括的な国家関係を話し合った中で、その中の一つの懸案として個別具体的な問題を話し合うのが筋である。
 小沢代表は、参議院の与党でありながら、そのような会話をしていない。らち被害者の代表とほとんど変わらない会話しかしていないのである。また、個別懸案を話し合うにしても、全体のビジョンを示さなければならない。しかし、その県は話していない。小沢代表は日米同盟よりも国連を重視する姿勢を打ち出したかもしれない。しかし、そもそも「国連」とは日本の誤訳でしかなく、もともとは「United Nations」要するに「連合国」という意味合いである。これは、第二次対戦中に日独伊三国同盟の枢軸国に対抗した軍事連合であり、現在も安全保証会議など、軍事的な調整を行っている機関である。平和的な組織ではなく、「パックス・ユナイテッド・ネイションズ」ようするに、連合国を中心とする圧倒的な軍事力の下における平和という意味である。
 この「連合国=国連」の意思に従うとは、そのまま日本は連合国側軍事同盟にも参加するという意思表明であり、平和活動というものに限定するという内容そのものが「絵空事」というか、「国連」という誤訳のうえに成り立った、日本人的な机上空論でしかない。わたしは、国連に参加するなというのではない。私は戦前の松岡洋右とはことなる。しかし、逆に国連に参加している以上、「平和憲法です」などと空論を言っているのではなく、国際社会の一員として、中東石油地帯の治安や、そのほかの紛争の解決のために経済力以外の力を貸すべきであるし、そのために必要な国際常識や宗教的な知識をみにつけるべきである。
 そのうえで考えれば、国際上のルールとして国の代表である大使と、参議院与党の党首との会談をマスコミに公開し、あげくのはてに空論を振りかざして、相手のプライドを傷つけてよいはずがない。もちろん、故なき戦争に組する必要はない。しかしそうならば、中東、少なくともイラクなどの当該地域からの地下資源の恩恵や、その組する国からの輸入をこと環ら名けらばならない。先にも書いたが、アメリカの戦争のおかげで得た石油資源だけを何もしないでもらうというのは、国際社会上虫がよすぎるし、また、海賊多発地域のマラッカ海峡やホルムズ海峡を日本の国旗を挙げたタンカーが無傷で通れる、要するに公開の安全が保証され、無事に貨物が届くということがどのような意味か考えるべきである。まさに日本は「水と安全がタダと思っている平和ボケ」した国である。小沢代表の今回の対応は、その平和ボケの象徴として国際社会からみられる恐れがあることをい時期すべきである。また、それを賛美しているマスコミや国民はそれ以上の「平和ボケ」といえる。
 さて、小沢代表は、そこまで頭の悪い、そして国際感覚のない政治家ではない。と言うことは、何らかの意図を持ってこれを行ったであろうことは明らかである。
 では、その意図とはなんであろうか。
 簡単である。国民へのアピール以外にはない。上記に記載したように日本のマスコミは「平和ボケ」で「平和と安全はタダ」とおもっている。そのうえ、軍隊も持たないのに独立国を気取っている。それは、安全保証条約によって守ってくれているアメリカにはむかうほどのボケ方である。
 小沢代表は、その国民意識を読み取り、アメリカに「NO」ということで、日本が一人前の独立国であることを演出し、安全保証条約などなくても、アメリカに頼らなくてもどうにかなるということを示した。それは、次に控える衆議院総選挙への布石であり、アメリカとの同盟関係を維持する自民党政権の「対立路線」を継続する意思表示である。参議院与党になっても、独立した統一の政策をいうのではなく、また国際社会全体を見渡した外交関係を示すのでもなく、日本国内の狭い政局と選挙しかみない対応であったと考えるべきであろう。
 アメリカも、そのことも理解し、そして子供の喧嘩の相手をするかのごとく静観しているといってよい。国民は、そして一部のマスコミはすっかりその策に乗せられているといってよい。もちろんその批判一つできず防衛事務次官の人事などで国民の耳目をその大きな外交問題からそらしてしまった安倍政権の罪は思い。しかし、平和ボケの日本人はだませても国際社会はだませないであろう。
 今後、民主党は二つの選択肢に挟まれることになる。国際社会の標準か小沢イズムかである。そして、そこで無理をした場合、総選挙で与党政権をとったとしても長続きしない政権、羽田政権のようになってしまう可能性が強い。
 そして、民主党が政権政党として妥当かどうかが計られることになる。内部分裂などしている暇はない。一刻も早く民主党内で統一された政策をつくらなければならないだろう。しかし、その過程で民主党は再度崩壊する恐れがあることも付け加えなければならない。小沢代表の独自路線、対立路線は、対立することに主眼をおいていることを踏まえれば、その対立をやめて、独自政策になった場合に、反対してきた矛盾を一身にかぶらなければならないからである。かつてのや東大一党であった日本社会党もそれで崩壊したことは記憶に新しい。
 小沢代表は選挙はうまい。しかし、その政策とコンセンサスのとり方はあまりうまくない「剛腕」といわれるが「独善的」とも映る。また、政策政権担当に向いているという評価も少ない。自民党幹事長時代も、政策通というよりは「寝業師」という感じが強かった。その代表の下で、いかに統一し、ほかと関係が調整のとれた政策ができるか。また、それができないことを自民党が攻撃(反撃)できるかが、今後の焦点となる。
 最後に、日米関係に関してはあまり心配する必要もない。ただ、外圧による日本経済の悪化が考えられる。テロ特措法の延長をしない場合、日本製品の不買行動を含めた、アメリカの反日措置が考えられる。その場合、民主党は自分のことを棚に挙げて自民党に責任追及するであろうが、そのような展開が許されるはずがない。では、結局民主党がある程度のところで妥協するということになる。あるいは、小沢、反小沢で民主党が分れるする可能性がある。小沢派に国民新党がついて「政界再編」を歌う可能性もある。思い通りに行かなければ「アメリカの陰謀」などといううわさが流れることも考えられる。
 いずれにせよ、日本にとって今回の内容は必ずしもプラスではなく、しかしある程度のところで妥協される産物であろうと考えられるのである。

 

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