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総選挙総括・日本版プロレタリアート革命と自民党歴史的敗北

総選挙総括・日本版プロレタリアート革命と自民党歴史的敗北

 8月30日は様々な意味で歴史的な一日となった。わたしは、自民党の田村重信政務調査会調査役のご厚意により、期日前投票を前日までにすませて、御殿場の陸上自衛隊総合火力演習を見に行った。あの迫力はすごい。子供ならずとも、日本人は武器実弾の迫力をみることは少ない。日本人の多くは、戦争や武器使用は数十インチの画面の中のことと思っている。私自身もそうだったのかもしれない。爆風や轟音は我々が守られると思えば、頼もしくもあり、一方敵国から飛んでくると思えば驚異でもある。弾が飛んできてからでは「専守防衛」といえど犠牲者は発生する。国民の安全を守るためには、これら武器という実行行為と同時に、外交など実行行為にならないための不断の努力が必要になる。経済発展も貿易も、平和でなければ成立はしない。逆に、その平和を維持するために、自衛隊のこれらの火力は必要なものである。
 暑い中、彼等は常時の訓練の成果を演じてくれた。もちろん、訓練であり、またある意味では観客総数三万人超への見せ物だ。訓練や実践の想定とは異なるであろうところも多々あるであろう。しかし、何かあったときに最前線で戦うのは彼らであることには代わりはない。事に、敵国という戦争だけではなく、自然災害も同じ状況になる。
 その外交は、継続的な国の意志として海外から尊重される。その基本方針を決める政権の交代が8月30日に行われた。結果は知っての通り、民主党308議席、自民党119議席で、民主党が圧勝となった。9月16日の首班指名で鳩山由紀夫代表が総理大臣になることは明らかであろう。ここに政権交代が行われる。

 わたしは、今回の選挙をあえて「日本版プロレタリアート革命」といいたい。

 革命というと、日本ではよいイメージしかない。しかし、いくつかの革命をのぞき、国民を不幸に導いた革命も少なくない。日本の今回の革命もその結果は歴史の溝知り事になるであろう。百年後、日本人が、よかったと思うか、バカなことをしたと思うか。
 いずれにせよ、革命と言うことに関して、少し歴史からみてみよう。
 まず、革命はどうして起きるのか。
 革命が起きる要件は三つ。一つ目は現政権の腐敗と国民の信頼の喪失。二つ目は、利権の移譲。支配階級の交代とその受け皿の創設。三つ目は広義におけるマスコミの煽動。
 これら三種類の要件を歴史的な革命とともにみてみよう。まず現政権の腐敗と国民の信頼の喪失である。フランス革命は、ベルサイユのバラという歌劇で有名になった。ルイ16世とマリーアントワネット夫妻の悪政による国民の困窮が原因とされる。しかし、実際はルイ16世夫妻がどんなに浪費をしても、フランス国民が困窮するほどの浪費などできるはずがない。実際は「太陽王」といわれたルイ14世による国庫の枯渇と階級社会が問題の原因だ。ルイ14世は、オランダ侵略をはじめとした侵略戦争と、中央集権・重商主義による政治を行った。これが16世の治世になると、軍費による国庫の枯渇、中央集権による貴族の特権階級化、重商主義による貧富の差の明確化が顕在化する。ルイ16世は、このときに調整型の政治をとればよかったのか、手遅れだったのかは不明である。しかし、このときにルイ16世とマリーアントワネット夫妻の浪費がフランス国民の感情に火をつけたのは間違いがない。要するに、長期政権とその制度披露による矛盾が国民に蔓延し、不公平感が広まると、そこに、政治腐敗が顕在化する。そこに小さな事でも信頼を損なう行為があれば、それが引き金となるのだ。日本の明治維新でも同じだ。400年という長期間安定政権であったが、当然に「米本意世による貨幣経済」の矛盾は大きくなる。下級武士は「士農工商」の身分制度でもっとも最上位にいながら、貨幣経済下では商人に頭が上がらない状況になるのだ。そこに、黒船来航と、外国人への最恵国待遇が矛盾を増大化する。諸藩が独自に海外と戦争をする。薩英戦争などで、幕反体制の矛盾が顕在化する。そしてその矛盾を感じた下級士族と一部平民(高杉新作の奇兵隊など)により、維新が遂行される。幕府は、幕藩体制と尊皇・攘夷とで挟まれ、内部分裂を起こしてしまい、また、外国人など突発事項に対処できなくなっていたのである。
 今回の自民党もまさにそのものであろう。小泉改革は、小さな政府の実現と競争社会の導入による国力のアップを図った。しかし、急激な制度変更は、時間を追うにつれその歪みが発生する。阿倍・福田・麻生閣内閣はその歪みに対する対処が後手に回ってしまった。その結果が雇用不安と派遣村であろう。実際、今回の選挙でも小泉人気は衰えていなかった。小泉人気が衰えていなかったのは、小泉の政策そのものは間違っていなかったという事を示す一つの指標にもなる。しかし、ルイ16世が14世の歪みを一身に背負ったように、そしてフランス革命でもルイ14世が国民から指示されていたように、麻生太郎氏一人がその責任を負わされた形だ。この小泉改革以外にも、年金問題や官僚・閣僚の不祥事が追い打ちをかける。中川昭一氏の会見などは、その象徴なのかもしれない。
 そのような事項で内部分裂が起きるのは江戸幕府と近いところがある。官僚改革派と、歪み解消派の二つにわかれた自民党議員は、国民の批判を一身に浴びた麻生執行部に対し、最後まで麻生おろしとして内部混乱をした。国民からすれば見苦しい限りである。また、外国からの突発事項への対処が遅れたのも江戸幕府ににている。リーマンショックにたいする補正予算実行は、はじめから大きく行けばよいものを、三段ロケットと称して長期化した。これは、経済政策としては、やらないよりはましではあるものの、景気刺激には余分なコストがかかることになる。
 二つ目に、利権の移譲である。フランス革命は、ルイ16世とマリーアントワネットをギロチンにかけた革命政府は、共和制に移行する。共和制の後、その矛盾を受けて対当するのがナポレオンである。結局ブルボン王朝から平民出身の軍司令官ナポレオンに利権が移動したにすぎない。平民や下級階級のひとが支配階級になるのが革命だ。決して国民平等の世界が生まれるわけではなく、頭がすげ変わるだけである。明治維新でも同じ。維新の三傑をはじめとする薩長土肥の下級士族が台頭する。坂本竜馬の考えた国民主権の国会構想は、第二次大戦敗戦後、アメリカにより改革されるまで成し遂げられなかった。そればかりか、明治政府は民権運動を弾圧した時期があったのだ。このほかにも、中国の毛沢東然り、ソ連のレーニン然り、キューバのカストロ、リビアのカダフィ、北朝鮮の金日成、いずれも下級支配階級者の利権移譲の実現でしかない。北朝鮮の国民が現在革命によって幸福になったのかといえば、読者の皆様はどのような結論を出すであろうか。
 今回の選挙も、単純に自民党から民主党へ、もっといえば、自民党の支持団体である経団連から、民主党を支持する連合など組合側への利権移譲がなされただけでしかない。労働組合の幹部が「貴族」といわれるほど豪華な生活をしていることは、いまや常識である。経営者から組合への利権の移譲。これが「国民の勝利」なのかははなはだ疑問である。そもそも「官僚政治」は何が悪いのか。どうしてよくないのか。その説明はだれか受けたのであろうか。希少な不祥事をあげて、それを全体にあてはめてしまっているだけではないだろうか。それら理由づけこそ「利権の移譲」でしかないのだ。年金問題などは、管直人など民主党の代議士が厚生大臣であったときに見落としてきた問題であるし、拉致問題は、社会党はなかったと論文を掲載していたのだ。それらの謝罪もいまだに存在しない。それは利権がほしいから事故の責任を他人(官僚や自民党)に転嫁しているからに他ならない。
 第三に、マスコミの煽動である。昔はマスコミというものはなかった。その代わりに処刑は公開で行われ、日本では「獄門」「さらし首」と言ってそれを世に広める方法をしていたのである。フランス革命時代も同じで、バスティーユの襲撃など多くの事件や夫人がヴェルサイユ宮殿にパンを求める交信をするなどの市民に訴え徐々に集団を増やしてゆくという方法を行っていたのである。ちょうど本が一般に読まれるようになっておりルソーの社会契約説などの考え方が市民の間に広まる役目をしていたのも、一種のマスコミ効果であろう。明治維新においても、生麦事件など多くの事件がマスコミの役目をした。それ以上に江戸や横浜の街を闊歩する「南蛮人」「紅毛人」が何よりの宣伝効果であった。現在の北朝鮮の報道も、まさにマスコミによる煽動により国民が異常な状況になってる一例である。
 今回の選挙がマスコミの煽動である以外に他は何もない。麻生内閣に失政がなかったのは間違いがない事実だ。先にあげたように、小泉内閣の意生み出した「格差」というひずみを埋めることができなかったし、それ以前から延々と続く年金問題なども、現政府が問題があるかのごとく報道を繰り返していた。何よりも「政権選択選挙」ということ自体がおかしい。そもそも、選挙は代議員を選んでいるものの、それにより今までも政権選択をしていたのである。しかし、それが、今回だけことさらにあげているのは、政策が論争の的にならなかったからである。自民党も、ネガティブキャンペーンに終始した感があったが、実際は政策を比較すべきであり、その政策を行ったときに具体的な生活や環境の変化を考えるべきであったと思う。しかし、マスコミがそれをさせなかった。われわれ日本人は、隣の北朝鮮を気にするよりも、まず我が国のあり方を見直すべきではないのか。
 いずれにせよ、このようにして革命が発生した。それだけでなく、それが「プロレタリアート(無産階級)」によって行われたという。
 実際、日本に「プロレタリアート」がいるのかといえば、それは違う。しかし、日本人は「心理的プロレタリアート」の集団である。
 日本人は、常に横並びを意識し、また世間の目というように、実態のない社会という集団における自分の位置関係を意識している。一時期「KY」(空気読めない)という言葉がはやったが、まさに「空気を読まないと周囲から奇異な目で見られる」という文化の中にある。その国民性に対して、戦後60年間日教組は「権利意識教育」を施してきた。そのために、結局は「権利の充足がないことは不幸なこと」ということになると同時に「自分の権利が認められないのは他人が悪い」という責任転嫁の考え方に傾倒してくる。この考え方が究極に行ってしまったのがニートであり、一方で通り魔的な異常殺人である。昨年の秋葉原通り魔などはその典型と言えよう。自分が悪いという義務の感覚が抜けていることが、そのまま他人を傷つけるという行動につながってゆく。また、これが、集団になると「集団的不満状態」が成立してしまい、「心理的プロレタリアート」が発生する。これは「無資産」という意味ではなく「心理的に充足することを知らない人」という意味になるのではないだろうか。そして「充足できないこと」の責任が、そのまま「政府に対する不満」ということになる。
 今回の選挙は、その「心理的プロレタリアート」集団が、横並び意識によって他社と論調を合わせて「政権交代」という不確定な現状打破を狙ったものである。それが大きなうねりになり、「プロレタリアート革命」になったのだ。その中には政策などは考えず、現状打破と、責任の転嫁先の破たんの身を望み将来を考えない「無知な国民」とそれを煽動する集団が発生するのだ。私は、私の著書の中で民主党をナチスドイツと同じとしたが、まさにそのような結果になったと考えている。
 さて、この状態において、自民党はどのような再生をするのか。今までのままではだめであろう。また、民主党が善政を行ったらそれもだめであろう。ただ143人もの新人議員をどのように束ねて意見の統一を求めるのかは、なかなか難しい。
 現段階で、若返りなどと言われている。しかしそれだけであろうか。実際に、自民党の再生というよりは理性的な政治を取り戻し、日本を良くするためには、まずは大人に対する再教育システムの開発であろう。活字離れなど憂慮すべきことは非常に多い。ことに「考えない大人たち」は、もっとも大きな問題だ。考えない大人たちが多いことが戦前日本を戦争に導いたのだ。
 第二に、理想を持つことである。100年、50年先の日本の姿を思い描き、そしてそこから現在を導き出して考えなければならない。目標がないので、どうしても直近の生活やバラマキに目が行く。それが国の借金を増やし、子や孫の世代の日本を暗くしてしまっている。長期的ビジョンを持った政策うを立てて、その中で「今何をすべきか」を国民に問いかけなければならない。高速道慮を無料化したり、借金して子供手当をばらまいたり、官僚組織を破壊してしまって、日本の政治が持つのか。どのような日本が待っているのか。政治家は、しっかりとそれらを示さなければならない。直近の財源論などは二の次である。
 最後に、フランス革命でナポレオンの登場、明治維新で維新の三傑の登場のように、しっかりとそれら政策を実現し、そして日本人を導くカリスマ指導者が出現しなければならない。若返りということは、逆にいえば、今までの人にそのカリスマ指導者がいなかったということを示す。本当にそうなのか、また、議員でなくてもそのような指導者の候補者がいるのか。人材育成が必要であろう。
 いずれにせよ、しっかりとした製s買うと議論をする環境が日本を良くする方策である。利権の移譲で民主党の独裁にしてはならない。国民はそのことを肝に銘じて政治を監視しなければならないのではないか。

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コメント

初めまして。
先日、民主党の闇を読ませて頂いて日本にもまともなジャーナリストがいるのだなぁと・・(笑)

>「考えない大人たち」は、もっとも大きな問題だ。
これが第一ですね。
自分たちが考えていないことすら気が付いていない。
それを子供たちが手本として見てしまっているので、政治的無関心が高まるのはいたし方がないかと。

>理想を持つことである。
麻生総理のビジョンは理想のひとつだったのですが・・
メディアはまったく報じなかった為、一時的に頓挫している状態です。
若い世代はネットというシステムで情報を得ることができますが、本当に自分で考えることができるのかはまだわかりません。
期待したいところですが。

投稿: A9BQMEyGvg | 2009年9月10日 (木) 00時01分

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