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北方領土2島先行返還論の「落とし穴」と「功罪」と「政治的な決断」

北方領土2島先行返還論の「落とし穴」と「功罪」と「政治的な決断」

 北方領土2島返還論がかなりマスコミをにぎわしている。先日、ある講演会で、「なぜ北方領土は4島なのか」という質問をしたところ、実はそこにいらっしゃる人々がほとんど「理由がわからない」ということになっているのである。実は日本の教育において、「日本の領土」ということがどういうことで決まっていて、どういうように日本の領土を保持するのかということを、まったく教えていない。「にほんのりょうどはこうです」(あえて平仮名)という日本の地図を見せることはする。しかし、その教えている本人も、「教育指導要領にそのように書いているから」などとして、日本国の領土ということにあまり関心を持っていないのである。
  確かに、日本国は、陸続きの国境線を持っていない。そのために、地図を見せるだけで国境を示したつもりになっているようである。日本の教育者の考え方というのはそのレベルなのかと愕然としてしまう。そうなってくると、「なぜ北方領土は4島なのか」ということがわからずに、北方領土を語る人が増えてしまう。マスコミでは国民に対する「世論調査」で「北方領土はなぜ4島なのか」「なぜ日本は北方領土返還を主張しているのか」などのことをしっかりと出したうえで、支持率調査をしているのであろうか。それとも「それら根本的なことを知らないうちに、ただ何となく雰囲気で北方領土のことを聞いているのか」ということをまずは明らかにすべきではないのか。
  さて、その意味において、実は日露戦争以降の、いや、明治8年の千島樺太交換条約までさかのぼらなければならない。日本とロシアとの国境は安政元年(1855年)の日露和親条約において千島列島(クリル列島)の択捉島(エトロフ島)と得撫島(ウルップ島)との間に定められたが、樺太については国境を定めることができず、日露混住の地とされた。1874年3月、樺太全島をロシア領とし、その代わりに得撫島以北の諸島を日本が領有することなど、樺太放棄論に基づく訓令を携えて、特命全権大使榎本武揚はサンクトペテルブルクに赴いた。榎本とスツレモーホフ(Stremoukhov)ロシア外務省アジア局長、アレクサンドル・ゴルチャコフロシア外相との間で交渉が進められ、その結果、樺太での日本の権益を放棄する代わりに、得撫島以北の千島18島をロシアが日本に譲渡すること、および、両国資産の買取、漁業権承認などを取り決めた樺太・千島交換条約を締結した。
 実は、これが、日露戦争以前の日本とロシアの国境であったのである。

プーチンの思うつぼ? 北方領土「最終決着」の落とし穴

 ロシアのプーチン大統領の12月来日を前に、北方領土問題の落としどころについて論議がにぎやかだ。やれ歯舞、色丹の2つだけでいい、やれ国後、択捉は共同開発ができれば十分等々、「捕らぬたぬき」そのものだ。
 日本を取り巻く大国間の力関係、そして日ロの国内情勢をよく見るならば、領土問題を今すぐ最終解決できないことは、誰でも分かる。だからと言って島を放り出したり、ロシアと敵対したりしてはいけない。大事なのは、領土問題を「時効」に持ち込ませないこと、そして対ロ関係で日本のためになるものは活用することを肝に銘じつつ、前向きに付き合っていくことだ。
「おそロシア」とか言って食わず嫌いの日本人が多いロシアは、日本のすぐ隣のヨーロッパだ。成田から飛行機で2時間強のウラジオストクは日に日に整備され、生活も落ち着いている。
 日ロ両国にとって関係増進はプラスとなる。ロシアは人口わずか600万強の極東部の経済を強化し、東北部だけでも人口1億以上を抱える中国に席巻されるのを防ぐことができる。日本も対ロ関係を良くしておけば、ロシアが中国と束になってかかってくるのを防げる。
 日本はよく、「腹に一物持ったままでは本当の友人にはなれない」という人間関係の原則を国と国の関係にも適用する。ロシアと友好関係を結ぶためには「小さな島のことなど忘れろ」とまで言う人がいる。しかし、国と国の関係は人間関係とは違う。「腹に一物持ったまま手を握る」のは、古今東西当たり前のこと。中央アジアなどでは、友好国同士、今でも国境の画定交渉を延々と続けている。
 日本が北方領土返還要求を捨てずとも、ロシアは日本との友好関係を対中カードとして使えるし、中国より払いのいい日本に石油やガスを輸出したがっている。日本が国後、択捉を諦めたところで、ロシアはいつも日本の肩を持つわけでもない。
「対米自主路線」の矛盾
「日本は戦後、歯舞、色丹の返還だけでソ連と平和条約を結ぼうとした。だが日ソ友好を警戒したアメリカが日本に国後、択捉も要求させた。冷戦後の今、アメリカの圧力はもはやない」という議論がある。これは対米自主路線に見えてそうではない。自国領の返還を要求するのに、アメリカの意思を忖度するなど、対米依存の骨頂だ。
 国後、択捉は19世紀半ばに日ロが国交を樹立した際に日本領と認められた。それ以来、1945年のソ連軍占領や47年の日本人住民の強制追放まで一貫して日本の実効支配の下にあった。日本はアメリカに言われたからではなく、自分のものだから返還要求をしているのだ。自国の領土を安易に譲る国家は世界で相手にされない。日本の場合、尖閣諸島、竹島だけでなく、沖縄にさえ手を伸ばしてくる国が出てくるだろう。
 領土問題は、常に「交渉を進めている」状態に維持しておく必要がある。でないと、相手の実効支配を黙認した格好になり、法的に不利になる。ロシア本土でインフラなどを両国が50対50の負担で建設したりして、ロシアをいつも引き付けておくことも必要だ。
 共同開発するにしても、ロシアの実効支配を認めるべきではない。起こり得る刑事・民事上の係争をロシアの官憲がロシア法で裁くのをのんではいけないし、開発に当たっては日本人旧島民の地権も考えねばならない。
「最初に歯舞、色丹返還。次に国後、択捉の返還交渉」という2段階論は非現実的だ。ロシアは歯舞、色丹返還で最終決着だ、と主張するだろう。プーチン政権は、日本が考えるほど世界で孤立もしておらず、経済が崩壊間際でもないので、手ごわい。
 安倍政権は民進党内の足並みが乱れている今、「領土問題での成果」がなくても総選挙を打てる。12月のプーチン訪日で重要なのは、領土問題の最終的解決を焦ることなく、「日ロ関係と領土問題解決を前向きに進めていく枠組み」をしっかり、じっくり合意することだろう。
[2016.10.25号掲載]ニューズウィーク日本版
河東哲夫(本誌コラムニスト)

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-6081.php-

 日本は、日露和親条約の内容から「北方領土」を「日本固有の領土」と言っており、慈雨は「千島樺太交換条約」に関しては完全に無視した形になっている。なぜ、日本の外交がこのことを無視しているかと言えば、サンフランシスコ講和条約において、日本は「千島列島を放棄する」としていることから、日露和親条約によって「千島列島に入らない」としている北方領土4島の返還を求めているということになる。
  一方、本来、日露戦争以降、平和条約が結ばれていない日本とロシアである。この内容は、特にロシア革命以降、なぜか関係が悪化しており日ソ不可侵条約がなし崩し的にソ連の一方的な侵略行為によって無視されたことによって、何とも言えない状況になっているのである。特にサンフランシスコ講和条約に調印していないロシアにおいて、その内容は「全く受理されるものではない」ということになる。
  そのために「日ロ平和条約」によって「国境線画定」が急務であるが、「安易な妥協」をすれば、「本来の固有の領土」も全くなくなってしまうということになるのである。
  さて、このような状態の中において「日本とロシア」は「お互いの外交関係」によって様々な話をしなければならない状態にあるのである。祖でなければ「日露戦争以前の条約」というのであれば、本来ならば「千島樺太交換条約」まで戻る話になるのではないか。
  それだけの外交をしなければならないが、実際に、その外交がしっかりとできるといううようなものではない。上記のように「条約」であれば、どこまでが破棄され、どこまでの条約が生きているというようにすることができるが、「固有の領土論」を言い始めれば、「いつの時点に戻って固有の領土なのか」ということの国際的なコンセンサスが取れなくなってしまうということになるのである。そのようなことでは、「契約主義」「条約主義」の世界各国において「恣意的な国境線」を認めることになり、例えば「李承晩ライン」や「中国の九段線」を、国際社会に認めさせるような論理に発展しかねないのであろう。
  要するに、「条約などによらない妥協した政治決断」を行えば、「他の国の横暴を止めることのができないという前例」を作ることになり、現在の国力を背景にした武力的威圧によって、国境線を引くということ、過去の条約や法による支配を行うことを否定する結果になるのではないか。
  さて、北方領土に関しては、その決断が日本を相手にする「中国や韓国の横暴」に対して、その主張を止めるというような部分も出てくるのではないか。日本の外交というものが「条約による決定」をするということをしっかりと考えておかなければならない。そのことができない「政治決断」は、かえって、日本国の国益を損ねる結果になりかねないのである。
  さて、冒頭に「国境線」という話をした。なぜ日本国があるのか、なぜ日本国の領土はこのようになっているのあ。竹島は、尖閣諸島は、そして北方領土は、なぜ日本領土なのか、そもそもしっかりとそれを教え、そして「日本は条約的にも国際社会的にも正しい基準で領土を主張している」ということを、しっかりと、教えなければならないし、そのことを認識したうえで、政治を判断しなければならない。
  そしてそのようなことを主張する報道がなぜできないのか。日本の、誤った言論空間は、今後も国益を損ねる結果になりかねないので、あえて、主張する。

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